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大阪家庭裁判所 昭和40年(家)6091号 審判

申立人 河村朝子(仮名)

相手方 太田秀則(仮名)

事件本人 太田邦子(仮名) 昭和三八年九月一八日生

主文

相手方は申立人に対し、事件本人の監護養育費として、昭和四〇年六月より昭和四一年七月まで一ヵ月金四、〇〇〇円を、同年八月より、事件本人が義務教育を終了する月まで一ヵ月金四、七〇〇円を(既に期限を経過した分は、本審判確定の日の翌日限り)大阪家庭裁判所に寄託して支払うこと。

理由

一、申立の趣旨

申立人は相手方と昭和三八年八月二〇日調停離婚し、同年九月一八日事件本人を出産した。事件本人は相手方の嫡出子(長女)であり、申立人は事件本人の親権者として同女の監護養育に当つているが、相手方に対し、養育料の分担を求める。

二、本件調査の結果当裁判所の認める事実及び判断は次のとおりである。

(一)  申立人と相手方は昭和三一年八月二〇日婚姻したものであるが、申立人に男性関係の出来たことが相手方に知れ、双方は昭和三八年八月二〇日当庁の調停により離婚するに至つた。離婚当時申立人は事件本人を懐妊しており、同年九月一八日分娩した。よつて事件本人は申立人と相手方の嫡出子として入籍されたのであるが、相手方は同人に対し、嫡出否認の訴をなし、右事件は昭和四〇年三月二六日棄却された。

申立人は相手方と、本件養育費について調停を重ねたが、協議が調わず、審判手続に移行したもので、その間相手方は親権者指定の申立(民法第八一九条三項)をするなど、申立人と抗争して来たところ、右親権者指定申立事件は、当裁判所に於て却下され、右審判は昭和四二年一月一三日確定した。

(二)  申立人は現在、事件本人と肩書住所地に居住し、稼働しながら、事件本人の監護養育に当つているが、監護養育の費用については、申立人と相手方はそれぞれ嫡出子たる事件本人を自己と同程度にその生活を保持させる義務のあることは言うを俟たないから、相手方は事件本人の監護養育の担当者たる申立人に対し、相当額の監護養育費を分担支払うべきことは明らかであり、以下その分担額について按する。

(三)  申立人は、昭和四〇年六月までは友人の経営する飲み屋を手伝つて月平均実収約一万五、〇〇〇円を得ており同年七月より財団法人大阪○○○○事業協会西大阪事務所に勤め、平均月収約一万七、〇〇〇円を得ているが、これには交通費の実費が含まれ、又所得税、住民税の控除がされていない点を考慮し、月平均実収額を約一万五、〇〇〇円と認めることとする。他に少くとも昭和四一年七月までは、夜間のみ飲食店(寿司屋)の手伝いをし、月平均実収約七、〇〇〇円を得ていたものである。従つて昭和四一年七月までは月平均約二万二、〇〇〇円、同年八月以降月平均約一万五、〇〇〇円の収入を得ているものと言うことができる。

そこで、申立人が右収入により事件本人と生活してゆく場合、事件本人のために費消されるべき費用を、労働科学研究所の「綜合消費単位」によつて算出(所謂労研方式)すると、昭和四一年七月までは一ヵ月につき、約五、九〇〇円

(22,000円×(40/(110+40)) = 5,867円)

同年八月以降は一ヵ月につき

(15,000円×(40/(110+40)) = 4,000円)

約四、〇〇〇円となる。

(四)  一方相手方は、東淀川区○○○三丁目陸橋下に店舗を賃借して、機械修理業を営み、昭和四〇年度に於て、月平均純収入(所得税・住民税・社会保険料控除)約五万円を得ていることが認められ、現在妻と暮している。そこで仮りに事件本人を引取つて生活する場合、同人のために費消されるべき費用を上記同様、労研方式によつて計算すると、一ヵ月につき

(50,000円×(40/(155+80+40)) = 7,273円)

(一五五は相手方の作業を重作業とみて独立世帯且つ事業を営むものとして算出)

約七、三〇〇円となり、母である申立人のもとに於ける生活よりやや豊かになし得ることが認められるから、一ヵ月金七、三〇〇円をもつて事件本人の監護養育に要すべき費用とみるのが相当である。そこで右金額を申立人と相手方とでどのように分担すべきかについては、双方がそれぞれ事件本人のため自己の資力に応じて費消すべき、上記認定の金額に比例して分担するのが合理的であると思料する。従つて、相手方の負担すべき金額は、昭和四一年七月までは、一ヵ月約四、〇〇〇円、

(7,300円×(7,300/(7,300+5,900)) = 4,037円)

同年八月以降は、一ヵ月約四、七〇〇円

(7,300円×(7,300/(7,300+4,000)) = 4,716円)

となる。

三、結論

以上のとおりであるから、相手方は申立人に対し、事件本人の監護養育費として、昭和四〇年六月(本件申立の月)より、昭和四一年七月まで、一ヵ月金四、〇〇〇円を、同年八月より事件本人が義務教育を終了する月に至るまで一ヵ月金四、七〇〇円を毎月末日限り(既に期限を経過した分は、本審判確定の日の翌日限り)大阪家庭裁判所に寄託して支払うべきである。

よつて主文のとおり審判する。(尚、この審判は、その後当事者間に事情の変更があれば、当裁判所に変更の申立をなしうるものである)。

(家事審判官 失部紀子)

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